担当さんにインタビュー!-児童養護施設とグループホーム新築の裏話 Part.1-
インタビューにご協力いただいてありがとうございます。本日はどうぞよろしくおねがいいたします!(インタビュアー)
はい、よろしくお願いいたします(担当さん)
最初に、社会福祉法人 城山学園の成り立ちについて教えてください。
もともとは、戦災孤児の救済ということで、キリスト教の牧師さんがその親類縁者へ土地の提供もしつつ、昭和26年(1951年)に城山ホーム(現:城山学園)が設立されました。
昭和31年(1956年)に財団法人城山学園の運営の認可を得て、8名のお子さんを預かる形でスタートしました。
現在はどのくらいの人数がいますか?
前年度は本体施設が45名定員ですね。それ以外にグループホームが1軒(6名定員)です。
今回グループホームを建てて頂いたので、今年度は本体施設が42名、グループホームが2軒になるので、各定員6名の12名になります。
グループホームを始めたきっかけはなんでしょうか?
きっかけは、「地域小規模児童養護施設を建ててくれる施設ありますか?」という触れ込みがあったことです。当時の園長が「うちでまずは作ろう」と言いまして、神奈川県で最初に手を挙げることになりました。それが1軒目の“ぐるーぷほーむ指路(しろ)”です。
↑ぐるーぷほーむ指路
“指路”は珍しい漢字を当てていますね。名前の由来をお伺いしてもよろしいでしょうか。
指路は色にこだわったのか、漢字にこだわったのか今となってはわかりませんが、当時の園長が決めました。
横浜にキリスト教の「横浜指路教会」という教会があるようで、そこからそのままとったのか、自分が思い描いた漢字が重なったのかはわかりませんが、「教会に連絡をとって許可をもらってこの漢字を使わせてもらっているんだよ」と言っていました。
子どもたちの未来を指し示す目印になればいいな、という想いで、「指すに路(みち)」と書いて指路(しろ)という名前です。
↑ぐるーぷほーむ蒼生
ぐるーぷほーむ蒼生(あお)の名前を決めたのも同じ園長先生だったのですが、「しろ」があるから色にこだわって「あお」にしようという事になって、漢字を当てました。
当時のコンセプトは高校生に卒園前の準備をしてほしいということで、高校生の未来を切り開いていく姿を「草原を駆けるチンギスハーン」にたとえて名前をつけました。そのため、蒼生の”蒼”というのは空の青ではなくて草の青で、2文字目の”生”は草が生えるという意味です。
今となってはぐるーぷほーむ蒼生に入居する子は高校生に限っていないので、当初のコンセプトとはずれてきている感じはありますが、もともとはそういう意味で名前がつけられました。
当時は比較的大きな子が多かったのですね。
私は蒼生のスタートメンバーなのですが、その時は高校1年生が2人、2年生が2人、3年生が2人という感じでした。
当時その子たちがもともと暮らしていた城山学園(本体施設)は今の城山学園より2倍くらい標高が高い山の中腹に建っていました。
山奥からグループホームに移動して生活が始まるということで、高校生たちはあんな山奥なんてという思いがあったので羽根を伸ばしすぎてしまうこともありました。思春期でもあるのでなかなか大変な生活ではありましたね。
なので、高校生だけでグループホームを編成していくのは難しいねという話になって、そこからは卒業していくごとに小学生や中学生が入居するようになりました。
年下の子がいると気持ちがしっかりしたりするのでしょうか。
子どもたちがどうというよりは、職員が気持ち的に助かりますね。和むっていいますか。
なるほど。ちなみに今回ぐるーぷほーむ蒼生は何歳くらいのお子さんが入居されますか?
今年度は年長になるお子さんと、中学1年生、高校1年生がそれぞれ1人、高校2年生になる子が2人です。定員は6名ですが、5名でスタートします。
年の離れた小さい子はアイドル的な存在になりそうですね。
まだ幼い子が養護施設に来なきゃいけない境遇はなかなかハードです。そういう意味だとやっぱりアイドルの時期を過ごさせてあげることも大事だなとは思っているので、小さい時はたくさん声をかけてあげたいですね。
本体施設よりもグループホームの方が家庭的な環境にしやすいだろうという判断で、グループホームを利用してもらうことになりました。ちやほやもしてあげてほしいし、手や目をかけてあげてほしいですね。
少人数だと目も届きやすいですね。
そうですね。本体施設は1部屋6名定員でやっていますが、結局は建物全体の定員42名の集団生活となることも多いです。お子さんたちって横の連携もすごいです。
うちではOKだけど、隣ではOKとされていない約束事があったりとか、そういうことを横のつながりで知っていて、「あっちはいいのに何で俺んちだめなんだよ」みたいなことが起こりやすいので、どうしても大人の間でも約束事を決めて生活していかないと立ち行かないことが多いです。
グループホームはそういう意味ですと、建物が離れているので、学園のルールに縛られすぎずに過ごすことができます。それこそ家ごとの約束事というか、家の中で柔軟に対応できる部分は多いかなと考えています。
なるほどですね。たしかに家が離れている分環境が変わりそうです。
お子さんたちは放課後の時間は何をして過ごしていらっしゃいますか。
基本的には、できれば一般家庭と同じ様に過ごさせてあげたいと思っています。「この時間は掃除しましょう」とか「この時間は奉仕活動があります」ということは特にないですね。
放課後は宿題をやったりして、遊びに行く子は遊びに行って、特別なことは特になく、普通の生活をしています。
メリットデメリットある話ではあるのですが、横をみれば同じくらいの年代のお子さんがいるので、友達は作りやすいですし、ちょっと遊びたいなと思ったら、すぐ声をかける相手がいる環境です。
しかし、我々としては外にもお友達を作ってほしいと思っています。施設内で友達関係は完結できてしまう環境ではあるのですがやっぱり狭いので、施設の中でくっついたり離れたりということをやってほしいのではなくて、もっと外に出ていろんなことを吸収してほしいなと思う部分もあります。
そういう意味で友達ができやすい環境である反面、世界が広がりづらいというところがあるかなと思っています。
また中には、習い事をしているお子さんもいます。今はサッカーや野球をやっている男の子が1人ずつ、バレーボールを習っている女の子が3人、水泳を習っている子が1人です。習い事を子供たちがやりたいといったときにはやらせてあげられるような環境は整えています。
やっぱり外に友達のコミュニティがある子は、外でもまれて学んでくることがたくさんあるのでたくましい感じはしますね(笑)
それから、少し前までは子供会も参加させてもらっていました。子供会活動のイベントでキャンプを地域のお子さんたちと一緒に行かせてもらったりということもありましたが、地域のお子さんがどんどん減っていってしまって、城山学園がいないと子供会も成立しないような状況になってしまいました。
子供会も貴重な機会だと思っていたのですが、どこも縮小気味です。
そのため子供会経由の活動は無くなってしまいましたが、積極的に外部と交流していってほしいなとは変わらず思っています。
↑(社会福祉法人 城山学園しろやまブログ Holy Night より引用)
ブログでクリスマス会を楽しんでいる様子を見ました。ジャンボリミッキーを踊るのはすごいですね。(社会福祉法人 城山学園しろやまブログ Holy Night)
はい。あれは子どもの発案です。子どもが「この職員と踊りたい」と指名をしてその職員が「いいよ」と言ったので…どれくらい練習していたんでしょう、1ヵ月以上は多分2人で時間を作って練習していました。
行事ごとに子どもたちが出し物をしたりするんですが、基本的には子どもたちが「○○やりたいから○○さん付き合って」みたいな感じで大人も巻き込んで企画をしています。なのでそれにはなるべく応えるようにしたいなと思っていまして。あのジャンボリミッキーを踊っていた女性の職員も、とにかくリクエストに応えようと一生懸命やってくれたのかなと思います。
ブログ(社会福祉法人 城山学園しろやまブログ)を拝見して、季節感を大事にしているように感じました。
そうですね。施設は文化が育ちづらいと言われています。季節ごとの行事としてなるべくイベントを作って子どもたちに体感していってほしいなとは思っていますね。
それこそ、今時正月に餅つきするご家庭も少ないとは思うのですが、そこをうちはあえて杵と臼で餅つき大会をやっています。
それから節分の豆まきも、若手の男性職員が鬼の扮装をして、部屋を巡って豆をまかれる役をやってくれました。
ここで育ったお子さんたちが自分で家庭を作った時にどんな家庭をつくれるかどうかのイメージを、思い出としてもってほしいなと思っています。
施設生活が長い子はなかなかお家のイメージが持てなくって、どんな家庭づくりをしていったら良いんだろう、とか、子育てがうまくできないと悩んだりすることがあります。
なので、極端な話をすると我々が子育てしている姿だったりとかも見てほしいですし、年中行事やそういう季節感みたいなものを生活の中に取り入れていってほしいなという思いでイベントを開催しています。
児童養護施設の年齢制限は少し前までは18歳まででした。だんだん年齢が上がってきてはいますが、20歳前に退所していく子が多いです。施設ですごした時間よりもそれから先の人生の方がよっぽど長いので、その時に覚えていてくれてたらいいなと思うことはやっていきたいと思います。
子どもたちと過ごす中で最近嬉しかったことや、やりがいを感じたことはありますか?
小さいお子さんは成長が目に見えてわかります。こちらの取り組みがその子の成長にこんな風に反映されていくんだということがすごくわかりやすいので、年少のお子さんを担当する職員は楽しいだろうなと思います。
中高生になると反抗期にも入りますし、子供たちもイライラしたことがあるときに感情を伝えられる大人は我々なので、当たられることもありますね。…うーん。だからたぶん中高生を担当している職員はしんどい思いはあるだろうなとは思います。
人の成長って何が正解とかもないので、自分が日々取り組んでいることがあっているのか間違っているのか、成果があるのかないのか、みたいなところがはっきりしない仕事なんですよね。
…なので、そうですね。それこそ卒園する子を見送るときとか、あとは社会人になって退所していって、たまに同窓会みたいなイベントを開いたときに戻ってきてくれた子が「社会に出て初めてあの時うるさく言われていたことがこの事だったのかって気づいたよ」っていう事を言ってきてくれたりすると、「あぁやってきてよかった」って思えます。
この仕事を長く勤めて、卒園生を出していかないと自分がやったことへのフィードバックが見えづらいので、若い職員の皆さんには長く続けてほしいと思っています。
個人的には、高校1年生で入った女の子が高校3年間、私とコミュニケーションをとってくれないことがありました。その子は「今になって思うとあのころは反抗期だったのよ」って言うんですけれども。その子が退所した後、結婚式に呼んでくれたんです。本当に3年間話をしなくて、卒園した後も特にやり取りはしていなかったので、急に結婚式の招待状が届きました。それが、やりがいを感じたというか。そういう人生の大イベントに加われる仕事かなと思います。
同窓会に子どもが生まれたっていって連れてきてくれる子もいます。なので、養護施設にいるっていうこと自体が子どもにとってはしんどい出来事でしょうけど、その時期を一緒に過ごして、それにどういう感想を持ってくれるかはわからないですけれど、卒園した後も思い出して、子どもを見せに連れて来てくれたりということがあるのは、感慨深いです。
卒園生が子どもを連れてきてくれるのは嬉しいですね。
そうですね。事情はいろいろなので心配な子もいますが、一般的に自分の生活がうまくいっていないと同窓会も顔を出しにくいっていうのはここでも当てはまると思うので、子どもを見せに連れてきてくれるっていうことは、今うまくやれているよ、という報告なのかなと思っています。
安心できる場所のイメージなんですね、きっと。
(part2へ続く)